消費者一人ひとりも市場の重要なプレイヤー
つまり、今回、政府が民間企業の料金設定に介入した背景には、大手3社の寡占により市場での自由な競争、公正な競争が麻痺しているという異常事態に対し、それを改善する狙いがあったものと思われます。
その意味では、携帯電話事業全体の所管官庁として「電気通信事業法」に基づいて様々な施策を行う総務省、公正かつ自由な競争を維持・促進することを目的とする「独占禁止法」を運用する公正取引委員会、消費者保護を目的として「景品表示法」を運用する消費者庁も、携帯電話会社に対する対応においては、事業者間の競争を活性化して、消費者の利便性を高めるという方向で、基本的に一致していると思います。
また、裁判所は、2014年12月、「2年縛り」の解約金に関して、あるNPOが提起した訴訟において、解約金条項を適法とする判断を行っていますが、MNOの販売方法について独占禁止法違反のおそれがあることが指摘されれば、それを考慮せざるをえなくなるはずです。
すると、このような行政機関や裁判所の対応によって携帯電話料金が下がるのを、私たちユーザーは期待を込めて待っていれば良いのでしょうか。
いえ、ユーザーである私たちも、この市場の参加者であることを忘れてはいけません。
ユーザーもスマホの複雑な契約条件についてもっと勉強するべきだ、とまでは言いませんが、例えば、単純に安いMVNOにもっと目を向けても良いのではないかと思います。
もちろん、乗り換える手続きが面倒だったり、大手のMNOから中小のMVNOに移ることには不安もあるし、多少の勇気が必要かもしれません。しかし、MVNOでも、通信の機能では、MNOと実際にはそれほど変わらないといいます。
むしろ、MVNOに乗り換えるユーザーが増えれば、大手MNOは携帯電話料金を見直さざるをえなくなります。つまり、市場における競争が適切に機能するようになるのです。
平成30年版情報通信白書(総務省)によると、2017年の1世帯(総世帯)あたりの年間の移動電話通信料は10万250円で、2010年から25.4%も増えています。これでもまだ、許容範囲なのでしょうか。
いまは、首相官邸の主導による携帯電話料金値下げの動きばかりが目立ち、ユーザーの声があまり聞こえてきません。しかし、MVNOへの乗り換えが増えることは、ユーザーの意志表示にもなるわけです。
私たち一人ひとりが市場の重要なプレイヤーであることを意識し、行動に表すことも、とても大切なことです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。