
2020年度から、小学校でプログラミング教育が必修化されることになりました。将来のプログラマーを育てる一歩になると期待が寄せられていますが、一方で、せっかく優秀な人材を育てても、日本のIT業界の環境を変えないと、本末転倒になるという指摘もあります。
情報系学科出身者が極端に少ない日本のSE
小学校でプログラミングの授業が始まることになりましたが、情報系学科の教員として期待するところは大きいです。実は、現在、日本のSE(システムエンジニア)で、情報系学科出身者の割合は23%という調査結果があります。これは、他国と比較すると低いと言えます。
例えば、IT大国といわれるインドでは、SEの72%が情報系学科の出身です。アメリカでも44%がそうです。なぜ、日本は低いのか。ひとつには、日本ではハードウェア信仰が強く、ソフトウェアを軽視する風潮があるからかもしれません。あるいは、SEの仕事に必要な知識は、社会に出てから学べば良いと思われているからかもしれません。
しかし、一流のSEになろうとすれば、学ばなくてはならない専門知識はとても多いのです。例えば、アメリカの大学でコンピュータサイエンスを学ぶ学生は、月曜から金曜までは予習・復習をしながら授業を受けて、土日はレポートなどの授業課題を必死にこなす、という生活を送ることが珍しくないようです。そうしないと、シリコンバレーのIT企業などでソフトウェアエンジニア(SEのアメリカでの呼称)として働くことは難しいのでしょう。
ところが、日本ではSEといっても、プログラムが書けないSEもたくさんいます。ただし、日本でいうSEは守備範囲が広く、技術以外の側面が求められることも多いのですが。いずれにせよ、2020年までに37万人のIT人材が不足するという調査結果がありますが、誤解を恐れずに言えば、単に人数が足りないのではなく、優秀な人材が足りないと捉えるべきでしょう。
その意味では、小学生の頃からプログラミングに興味をもち、そのモチベーションを保ったまま情報系学科に進む学生が増えれば、それはうれしいことです。そうした学生を伸ばしてあげることは、私たちの責務であるとも思っています。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。